アレルギー
最近アトピーの赤ちゃんが増えております。
毎日の外来患者さんの中でアトピー性皮膚炎や気管支喘息の体質を持つ患者さんがめだちます。
アトピー体質とは、一口に言うと遺伝的な家庭的アレルギー体質ということになります。
自分の家系内に、アレルギー性の病気をもっている人がいます。
アレルギー性の病気とは次のようなものです。
喘息、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、じん麻疹、接触性皮膚炎(かぶれ)等。
アトピーは完全に治すのはむずかしい病気ですが、お母さん、お父さん、家族の方達の正しい知識とやさしい気配りで徐々によくなっていくと思いますのでみんなでがんばりましょう。


〜 アトピー性皮膚炎について知っておいてほしいこと 〜

アトピー性皮膚炎とは
 最近、アトピー性皮膚炎の名を知らない人はいないと言ってもいいほどよく耳にする言葉で、大部分が子供の病気であり、治りにくく長く続いて子供や母親を悩ます病気です。
 アトピー性皮膚炎は、誰にでも起きる皮膚病ではありません。これが出やすい体質**アトピー体質**の人に出る全身性の湿疹です。大部分は生後1〜2ヶ月に始まります。痒みが強く、そのため皮膚をひっかくと悪化し全身に拡がっていきます。再発しながら長い経過をとるのです。多くは5〜6才の学童期に良くなってきますが、思春期か成人期まで続く患者もおります。

アトピー性皮膚炎は個人差が大きい
 アトピー性皮膚炎といっても、軽いものから重いものまでいろいろの段階があります。この重い型のものが難治であると言われます。しかし、心配することはありません。根気よく適切な治療を繰り返していると、大部分は治ります。ですから、重い型のものは大変に努力が必要で、この努力には母親の力が大きいことを忘れないでほしいと思います。

アトピー性皮膚炎患者の生活指導
(a) 母親の役割の重要性
 アトピー性皮膚炎は、生活環境のいろいろな刺激を受けて、それが悪化の原因となることがあり、例えば、食事。家の中のほこり、ダニ等。従って通院のたびに皮膚が良くなってるか、悪化しているかだけでなく、今はこういう生活で経過を観察しているということを医師に報告しながら、お母さんが今もっている疑問を積極的に医師に相談していくことが大切です。

(b) 入浴と石鹸
 以前はこれらの病気は入浴してはいけない。石鹸はアルカリ性だから、湿疹を悪くするという考え方でした。しかし、現在は考え方が変わって、入浴しないで垢がたまってきて、かえって皮膚を悪化するから、入浴したほうが良いといわれることになりました。
 石鹸の条件としては@水に溶けやすい事、従って洗い流しやすく、仕上がりがうまくいく事。A人工乳化剤とか、色、香りが強くないもので皮膚に対する刺激の少ないものです。やわらかな石鹸に「ミノン」 「ニュートロジーナ」がありますが、普通の石鹸でも十分です。

(c) 口びるの荒れ
 アトピー児で、時に口びるがカサカサになって荒れてきて、白い粉をふいているように見えることがよくあります。そのため、アトピー児では。口びるをなめる癖があります。そうすると、いっそう口びるの荒れが目立ってきます。こういう子供に対してお母さんが日常使っているクリームをすり込んでやってください。長く使用しても安全です。

(d) 顔のはたけ
 顔の円形の白い粉をふいた部分ができてくる。
皮膚病で子供によくみます。最も効果のある方法は、ゆっくり入浴して、温まって皮膚に水分を十分に含ませた後で、やわらかいタオルで表面の水分をふき取った後、ローション(ボディーローション)クリームをすりこみます。

(e) 汗の影響
 汗をかいた時、汗は皮膚の中にしみこんで、この時痒みがましてくるのです。子供はのびのびと育てたいもので、外でたくさん遊んで汗をかくのは仕方がないことなので、入浴して汗を拭き取って、体をきれいに洗い流してやりましよう。

(f) 衣類について
 衣類によっては、痒みが強くなったり湿疹が悪化するものがあります。これは、主として下着の問題です。毛の肌着のように皮膚を直接さすもの、硬いごわごわした皮膚を強く摩擦する下着は避けます。綿製品が刺激が少なくて、汗を吸収しやすく、最も合理的と言えます。ナイロン、その他の人工繊維による下着は滑らかであるし、着心地もよく以前は下着から遊出されてくる物質が問題になって、それによるかぶれが多く見られましたが、最近は心配ないようです。
 電気毛布も避けたほうが良いでしょう。寝具と肌との間の空気が乾燥してくるので、痒みを強くしたり湿疹悪化させるからです。

(g) 食事の問題
 食事に関しては、なかなかむずかしい問題があります。ミルク、離乳食がどこまで関与してくるのか、それぞれの患者によって違いますので、先生によく相談しながら経過をみていくのが大切です。

(h) アトピー性皮膚炎の治療について
 アトピー性皮膚炎の治療は、
 @抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤の内服
 Aステロイドホルモン軟膏、保湿剤の外用
 B食事療法
ということになるわけです。
この中で、ステロイドホルモン軟膏は、恐ろしいものだという考え方をしているお母さん達もおられるようです。この軟膏を使うことを始めから拒絶するお母さん達も少なくないようです。しかし、医師の指導のもとに使っている限り心配ないことを知ってほしいと思います。

(i) アレルギー・マーチ(行進)
 アトピー体質をもつ人に、年令と共にいろんなアレルギー性の病気が現れることを、アレルギーマーチといいます。
病気として、アトピー性皮膚炎、アレルギー性下痢、反復性感冒、じん麻疹、気管支喘息、アレルギー性鼻炎(花粉が原因の時、花粉症と呼ぶ)、アレルギー性結膜炎等があります。年令と共に混合して出現することもあり、アトピー児にとって、つらい時期が続くことがあります。アトピー体質ということを理解しながら、医師に相談して、根気よく治療していって下さい。
 又、アトピー児でも全ての予防接種が可能ですから、忘れないで受けていってほしいものです。